診療報酬改定で現場が迷ったこと。複数店舗を回る薬剤師が感じた「本部と現場」のズレ

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診療報酬改定の前って、現場の空気が少しピリつきます。
新しいルールが始まる。算定の仕方が変わる。患者さんへの説明も必要になる。――なのに、準備の仕方はいつも理想通りにはいきません。

改定を翌月に控えたある日、本部から届いたのは、たった一文に近い連絡でした。

「厚労省の資料に目を通しておいてください。」

以上。
読み込みは各自で。現場で消化して。解釈は現場で。運用も現場で。そんな雰囲気が、通知の余白からにじんでいました。

もちろん、資料を読めば書いてあります。制度の趣旨も、要件も、算定の条件も。
でも、現場で必要なのは「書いてあること」だけではありません。

  • この患者さんのケースは対象になる?
  • どのタイミングで記録を残す?
  • 誰がチェックして、誰が最終判断する?
  • 迷ったときはどこに相談する?
  • 店舗間でズレが出たらどう揃える?

こういう「運用の骨格」がないと、読み込んだ人ほど悩みます。そして悩みは、忙しい時間帯ほど「とりあえず見送る」につながりやすい。私はそれが一番怖いと思っています。


目次

本部が決めない会社の強さと、弱さ

もともと、私の会社には全店共通の細かなマニュアルはありません。良く言えば現場裁量が大きい。悪く言えば標準化が薄い。それ自体は悪いことではないと思っています。

店舗ごとに処方元も違えば、診療科も違う。
高齢者が多い店舗もあれば、働き盛りの患者さんが中心の店舗もある。

現場に合わせて柔軟に動けるのは、むしろ強みです。一律のルールで縛ってしまうと、患者さんへの対応が硬くなったり、余計な手間が増えたりすることもありますからね。

ただ、診療報酬改定となると少し話が違います。柔軟に考えるというより、
「算定できるのか、できないのか」「要件を満たしているのか」
という線引きが必要になるからです。
ここが曖昧なままだと、現場は結局こうなります。

  • 忙しい店舗ほど慎重になって算定を控える
  • 積極的な店舗ほど算定する
  • 判断に自信がある人の店舗だけ進む
  • 自信がない人ほど「触らない」が安全策になる

これって、能力差だけで起きているわけではないと思うんです。判断するための材料が揃っているかどうか。そこでも差が出てしまいます。

もし私が管理薬剤師だったら、正直かなり困ったと思います。
もちろん、本部にも事情があることは分かっています。
人が足りない。作り込む時間もない。問い合わせも多い。改定は毎回ややこしい。
現場にいるからこそ、想像はつきます。

だから私の中のモヤモヤは、「全部決めてくれないこと」そのものではありませんでした。決めないなら決めないで、現場が迷ったときに支える仕組みも欲しい。そこが中途半端だったことに、私は引っかかっていました。

同じ会社なのに店舗で答えが違う

ヘルプで店舗を回っていると、改定直後の混乱がはっきり見えます。
一番驚いたのは、算定に関する会話の結論が店舗ごとにまったく違ったことでした。
同じ会社なのに、店舗ごとに答えが違うんです。
ある店舗では、迷いなく言います。
「これは算定します。いつもこうしてます。」

別の店舗では、同じような状況でもこう返ってきます。「うちは算定していません。要件が怖いので。」

さらに別の店舗では、そもそもその加算自体が話題に上がらない。「それ、今回うちは何もしてないですね。」

患者層の違いで「適用できるケースが少ない」という差なら分かります。でも今回私が感じたのは、「ケースの差」ではなく「解釈の差」でした。

  • どこまで記録が必要だと思っているか
  • 説明の方法をどう考えているか
  • 「該当する」の範囲を広く見るか狭く見るか
  • リスクをどこまで許容するか

もちろん、店舗ごとに患者さんも違えば仕事の進め方も違います。
だから多少の違いはあって当然です。この解釈が店舗ごとにバラバラになってしまうと、同じ会社としては少し気になります。

それに、算定を見送れば、表面上はトラブルが減るかもしれません。でもその裏で、「本来できる支援や取り組みをやらないまま終わってしまう」こともあります。

算定はお金の話に見えますが、その背景には「こういう医療を進めたい」という制度側の意図もあります。せっかく新しい仕組みができても、現場で「よく分からないからやらない」となれば、なかなか根付きません。そこは、もったいないなと思いました。

ヘルプだから見える。でも、ヘルプだから動かせない

私は常駐ではなく、いわゆるヘルプとして複数店舗に入る立場です。
だから、店舗ごとの違和感に気づきやすい。比較できてしまうからです。

「同じ会社なのに、ここまで違うんだ」そう思うことは結構あります。これは、複数店舗を回る立場だからこそ見える部分なのかもしれません。でも同時に、ヘルプだからこそ簡単には動かせない

その店舗には管理薬剤師がいて、そこで積み上げてきた仕事の流れがあります。私が突然、「この算定、やり方変えた方がいいですよ」と言ったとしても、それが本当に正しいとは限りません。

受け取る側からすれば、「ヘルプで来た人に評価された」と感じるかもしれない。
何より、運用を変えるとなると、記録の仕組みやスタッフの役割分担、監査への対応など、いろいろなところに影響します。私一人の一言でどうにかなる話ではありません。

もちろん、疑問に思ったことは本部に相談します。

ただ、本部の返答がすぐに返ってくるとは限らない。

何より、運用を変えるとなると、記録の仕組みやスタッフの役割分担、レジ処理、監査への対応など、いろいろなところに影響します。

私一人の一言でどうにかなる話ではありません。

もちろん、疑問に思ったことは本部に相談します。ただ、本部の返答がすぐに返ってくるとは限らない。返ってきても、「基本は現場判断で」という温度感のまま終わることもあります。

ヘルプとして店舗に入るたびに、「見えてしまうのに、今ここでは直せない」という感覚が少しずつ積み重なっていきました。

正解より、「ここまでは揃える」が欲しかった

改定のたびに思うのですが、現場が欲しいのは、何もかも決められた完璧なマニュアルではありません。もちろん、正確な情報は必要です。でも、実際に困るのは、「結局、どう判断すればいいの?」となったときです。
同じ会社なら、せめてこのくらいは揃っていてほしい。

  • 会社としての基本方針
  • 迷ったときの判断基準
  • 最低限必要な記録
  • 相談する窓口
  • 改定後に短時間でもいいので、全店向けの説明

店舗ごとの事情は違います。患者さんも違います。だから、全部を同じにする必要はありません。でも、「算定する・しない」というところまで店舗ごとにバラバラになってしまうと、現場はやっぱり迷います。

ヘルプは戸惑う。新人は、どれを基準に覚えればいいのか分からない。中堅は、自分の判断でいいのか悩む。管理薬剤師は、「自分の解釈が、そのまま店舗のルールになってしまう」プレッシャーを背負う。

そうなると最終的に、「面倒だからやらない」「怖いからやらない」という方向に流れてしまうこともあります。それは、患者さんにとっても、現場にとっても、会社にとっても、あまり良い状態ではないと思います。

現場裁量は、悪いものではありません。私はむしろ、現場が自分たちで考えて動けることは強みだと思っています。だからこそ、「ここまでは会社として揃える」という土台だけはあったほうがいい。

今回の診療報酬改定で私が感じたのは、「正解を全部教えてほしい」ということではありませんでした。

同じ会社で働いているなら、せめて同じ方向を向けるようにしてほしい。

それだけです。

そして、これは診療報酬改定に限った話ではないのかもしれません。
会社の方針が分からない。
教育体制が整っていない。
店舗によって言っていることが違う。

現場で働いていると、こういう「小さなモヤモヤ」が積み重なることがあります。私自身も、今の働き方になってから、以前とは違う視点で会社を見るようになりました。

もし今の職場で「この会社のやり方、ちょっと合わないな」と感じているなら、転職する・しないをすぐ決めなくても、他の薬局ではどうなのかを知っておくだけでもいいと思います。

選択肢を知っているだけで、「ここしかない」と思わなくて済むからです。

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この記事を書いた人

調剤薬局一筋の薬剤師。転職8回、すべて調剤薬局。
生活習慣の見直しを患者様と一緒に考えていくうちに栄養系資格に興味。
食生活アドバイザー2級取得。1級試験に向けて勉強中。
EMSジムでダイエットにも励んています。

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