同じ日に2人の脳梗塞。薬局で感じたこと

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脳梗塞はやってるの?!

内科の門前薬局で働いていたある日、つい口から出てしまいました。
その薬局の普段の処方は高血圧や脂質異常症、糖尿病、胃腸の薬などが中心で、脳神経内科や循環器内科の処方に触れる機会は多くありません。だからこそ、その日は印象に強く残りました。

同じ日に、別々の患者さんから「脳梗塞だった」という話を2件続けて聞いたのです。偶然と言えば偶然。でも、薬局という生活に近い場所だからこそ見える“共通点の芽”のようなものもありました。

目次

1人目:70代女性。「まさか私が」から始まった処方

1人目は70代の女性。数年ぶりの来局で、その間のお薬手帳の記録はありませんでした。
今回初めて、循環器内科と脳神経内科の処方が並びます。それだけで、何か大きな出来事があったことが伝わってきます。

急に右手が動かなくなってね。不安で受診したら、そのまま入院になっちゃった。脳梗塞ですって。
2週間入院したのよ。
今日は退院後、初めての受診でね。これからお世話になります。

話し方ははっきりしていて、受け答えも明瞭。ご本人から経緯を丁寧に聞くことができました。
これまで健康診断も受ける機会が少なく、受診の習慣もあまりなかったそうです。「自分は大丈夫」という感覚が、決して根拠のない自信ではなく、日常を普通に過ごせていたからこそ生まれていたことも伝わってきました。

だからこそ、言葉の端々に「まさか自分が」という戸惑いがありました。
突然の発症、突然の入院、突然増えた薬――。生活の景色が一気に変わった人の、静かな衝撃を感じました。

2人目:80代女性。いつもと違う“微妙なズレ”が教えてくれたこと

2人目は80代の女性。ご家族が付き添って来局されました。認知症がある方で、普段から会話がスムーズとは限りません。
ただ、その日は「いつもと違う」感じがしました。
受け答えがさらに曖昧で、言葉がうまく出てこない。ろれつが回っていないようにも見える。「体調どうですか?」という問いかけへの反応も、どこか噛み合わない。

薬局は診断をする場所ではありません。それでも、日々の“いつもの様子”を知っているからこそ気づける変化があります。
ご家族も同じ違和感を覚えていたようで、薬を受け取ったあと、その足で脳神経内科を受診されました。


夕方、ご家族が薬局に立ち寄って報告してくれました。

脳梗塞でした。
処置をしてもらって、今は落ち着き、無事に帰宅できました。
心配してくれてありがとうございました。

ほっとしました。
無事に処置を受けられて、本当によかったです。受診が遅れていたらどうなっていたか。薬局での数分のやりとりが、結果的に“迷いなく受診する”後押しになったのだとしたら、これほど重い数分はありません。

2人の話を聞いて、気になったこと

この2人は対照的です。

  • 1人目:それまで大病もなく、健康への自信があった人
  • 2人目:認知症があり、生活に家族の支援が必要な人

水分摂取です。

年齢も背景も、生活の自立度も違う。
それなのに、話を聞くうちに気になった点がひとつありました。

水分摂取です。1人目は、普段ほとんど緑茶しか飲んでいなかったそうです。
私からは、水や麦茶なども取り入れるようお話ししました。

1人目の方は、普段ほとんど緑茶しか飲んでいないとのことでした。緑茶が悪いわけではありません。私は水や麦茶なども選択肢に入れ、意識して摂る工夫を提案しました。

2人目の方は独居。生活環境を考えると、そもそも「のどが渇いたら飲む」が成立しにくい可能性があります。
認知症があると、渇きの訴えが少なかったり、飲んだこと自体を忘れたり、コップを用意する・水を取りに行くといった一連の行動が負担になったりすることもあります。さらに、トイレが近くなるのが嫌で飲む量を減らしてしまう人もいます。

もちろん、水分不足が今回の脳梗塞に直結していたかどうかは分かりません。脳梗塞には高血圧、不整脈(心房細動など)、糖尿病、脂質異常症、喫煙、脱水、感染、疲労など、多くの要因が関与します。
それでも「同じ日に2件続いた」という事実が、普段何気なく言っている言葉を見直すきっかけになりました。

「水分をとってくださいね」では、届かない人がいる

私たちは夏や季節の変わり目など、脱水が気になる時期になると、患者さんにこう声をかけます。

こまめに水分をとってくださいね

とお話ししています。

でも、この“こまめに”が、実は一番難しい。

  • 飲んでいるつもりでも、量が全然足りていない
  • 仕事や家事で忘れる
  • トイレが心配で控える
  • そもそも水分を取りに行くのが億劫
  • 独居で、飲む習慣を支える人がいない
  • 認知機能の低下で「飲む」が抜け落ちる

こういう状況では、アドバイスが正しくても“実行可能な形”になっていません。
つまり、「正しいことを言う」だけでは健康行動に変わらない。ここが、薬局で患者さんと向き合う難しさであり、同時に役割でもあると感じました。

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この記事を書いた人

調剤薬局一筋の薬剤師。転職8回、すべて調剤薬局。
生活習慣の見直しを患者様と一緒に考えていくうちに栄養系資格に興味。
食生活アドバイザー2級取得。1級試験に向けて勉強中。
EMSジムでダイエットにも励んています。

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